お仕事ドラマの行末はいかに。

お仕事ドラマの行末はいかに。

この記事は「お仕事ドラマを観て、『さあ、明日からの仕事も頑張ろう』って思える時代って既に終わってない?どうなの?」という問いかけをつらつらと書いていくものです。せっかちな方は、それだけ知っていてください。

 

息子がTVerの『ドラえもん』を繰り返し繰り返し観るものだから、毎日TVerのトップ画面を眺めている。よくも飽きずに観られるものだと関心しながらもポチポチ画面を操作していると、あるドラマのタイトルに目がいった。

『転職の魔王様』カンテレ制作のドラマで既に6話まで放送されていた。主演、成田凌・小芝風花という布陣で、少し前に放送されていた『波よ聴いてくれ』の印象が残っていた小芝風花が全く違う雰囲気だったのに、これまた驚いてしまった。あの金髪好きだったけど。

https://www.ktv.jp/tenshokumao/

ドラマの内容には深く触れませんが、転職エージェントである来栖嵐(役:成田凌)は最強毒舌の魔王として様々な求職者と向き合っていく物語。よくある「普段なかなか言えないことを毒舌キャラが代弁してくれる」話で、番組公式サイト曰く「爽快エンターテインメント」らしい。

主人公の未谷千晴(役:小芝風花)は大手広告代理店をパラハラが原因で3年ほどで辞めてしまったことが第1話で語られるのだが、そう聞くと電通に勤めていた高橋まつりさん(当時24歳)が都内の女子寮で自らその生涯を終えてしまった事件を思い出す。2015年12月にその事件は起きたから、もう8年も経つことになる。

https://www.asahi.com/articles/ASNDS5STWNDQULFA03F.html

本作は原作小説『転職の魔王様(額賀澪著、PHP文芸文庫)』をドラマ化したものなのだが、誰がどう読んでも高橋まつりさんを思い浮かべるような設定を、主人公にできるほど時間が経ったのかどうか、正直なところ私には未だ怪しいところがある。彼女がもし生きていてくれたら、転職という道を選んでくれていたら、そんなパラレルワールドを描いてくれている作品なのだろうか、そう期待して観てしまう視聴者が多いのではないか。いや、そんな人は少数派なのだろうか。でも、カンテレは『エルピスー希望、あるいは災いー』においてもメディア業界の暗部を攻めたドラマを制作したので、本作もその流れを汲むものなのかなと勘繰ってしまう。違うと思うけど。

本作『転職の魔王様』には人材紹介会社が多数CMを出稿している。あまりに直球すぎる本編とCMのマッチング具合で、逆に広告主側もあからさま過ぎて嫌なのかとも思ったけど、全くそんなことはないのかもしれない。これくらいあからさまに訴求しないといけないのか。

この作品ほど自社CMを放送するのに適したCM枠もないだろうが、働く会社員諸氏は電車などの交通広告でも同じCMを見せられ、ドラマ本編でも「これでもか!」と出てく転職ネタに胸焼けしないのだろうか。ちなみに疑問なのは、このドラマを観て「あースッキリした、明日からの仕事も頑張るぞー」と思えるのかということ。それとも「迷ってたけど、俺も転職しよ。さて会員登録だ」と背中を押されるのだろうか。

個人的には勤め先の会社が変わったところで、そこまでその人の人生は変わらないと思う。何を変えたいかに依るだろうが、給与水準や勤務地など細かい諸条件は変わっても大元になる人生の方向性というのは転職しただけでは変わらない。

『半沢直樹シリーズ』『下町ロケット』的なTBS日曜劇場が得意とする「痛快お仕事ドラマ」で働く元気をもらい続けるのも限界じゃないだろうか。お仕事ドラマというフォーマットの先行きが気になりはじめている。

 

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